今年も栂池ロープウェイの春季運行が始まった。ロープウェイを利用することにより、誰もが簡単に栂池自然園へ行くことができる。
この時期の栂池自然園は積雪が4〜5mあり、大雪原が広がっている。当然ながらあるのは雪だけで花も何もないが、その景色は日本とは思えないほど雄大であり、静寂が支配する白銀の世界である。
だが近年のスノーシューブームとバックカントリースキー人気、さらに栂池ロープウェイの春季運行により容易に入山できることから、栂池自然園・天狗原周辺に入り込む人がわずか数年で激増した。
人が増えると困った問題が出てくる。ゴミ、し尿、そして所構わず滑るスキーヤー、スノーボーダーの人達。今これらが深刻な問題になっている。
栂池自然園から天狗原・白馬乗鞍岳にかけては、雷鳥の生息が確認されている。雷鳥は現在国内に推定2600羽しか生息していない。数だけ聞けば多いようにも思うが、生息できる場所が高山帯に限られていること、遺伝的多様性が極めて低いということなどから絶滅の危険性があり、このままいけばトキと同じ運命をたどる可能性が大きい。
その雷鳥の生息するエリア(テリトリー)に無数のシュプールの跡がある。つまり雷鳥のすぐ横をスキーヤー、スノーボーダーが滑っているのだ。雷鳥以外にも栂池自然園周辺には非常に貴重な野生動物が生息しているらしく、多くの人が入山することにより、生態系の崩壊が現実におこり始めている。このことについて、環境省は非常に問題視しており、今後の状況次第では全面的に立入禁止になる可能性も出てきたのである。
現在の取り組みとして、昨年までほとんど無法地帯であった栂池自然園・天狗原・白馬乗鞍岳周辺を、今年から立入禁止区域を設けることになり、栂池ロープウェイに乗車される人、及びへリスキーの参加者全員に、自然保護並びに立入禁止区域についての説明を実施することになった。また立入禁止区域の一部にロープで規制を設けたり、山案内人組合や捜対メンバーが監視にあたることになるようである。
貴重な自然を保護しながら、なおかつ自然の一部を使わせてもらって楽しむ。人間と自然とがうまく調和できるように、私自身そのことを念頭に置いて行動したいですし、皆さんもそうであってほしいと願います。