白馬岳の読み方は??
冬は雪で真っ白になる白馬連峰も、春になると雪解けが進んで部分的に山肌が見えてくるようになります。この時に見える山肌もしくは雪の模様のことを「雪形」と呼んでいて、動物や人物に例えられているものが多いです。
またこの雪形から山の名前になったとされているものもいくつかあり、羽根を広げた蝶の「蝶ヶ岳」、種まき爺さんの「爺ヶ岳」、武田菱(御菱)の「五竜岳」、そして代かき馬が現れる「白馬岳」。
その代かき馬の雪形は白馬岳の右肩、三国境付近に現れる胴体が丸くシッポが上に跳ね上がった馬のことを指してます。この代かき馬が現れる頃に田植えの準備を始めたとされており、代かき馬→代馬岳→白馬岳と変化しました。ゆえに白馬岳の読みは「しろうまだけ」であり、登山地図を含め山岳雑誌や新聞、テレビニュースで読み上げられるのも「しろうまだけ」です。
私も何の疑問も持たず「しろうまだけ」と呼んでました。白馬と名のつくものは白馬岳以外にも数多くあり、白馬村、白馬駅、白馬尻、白馬山荘、白馬大池、白馬三山・・・でもこれらは全て「はくば」と読み、「しろうま」と読むのは白馬岳のみでした。
そんななか、白馬で生まれ育ったガイド仲間の人たちと話をしていると、白馬岳は「はくばだけ」と呼んでおり、問いただしてみると
「おらぁ子供んころから『はくばだけ』と呼んでただ。『しろうまだけ』なんて呼んだことぁねぇだ。」
「だいたいあの白馬岳の横にある雪形を『しろかきうま』なんて呼んでるけどせぇ、おらぁたちはあんなものを『しろかきうま』なんて呼んだこたぁねぇだ。あん雪形は4月っころから出てて、そん頃は白馬の田んぼは雪のしたせぇ。田植えの準備なんかできっこねぇだ。」
確かにおっしゃる通り。白馬で田植えをするのは5月下旬〜6月にかけて。代かきはその前からするものの、4月からするなんてことはない。地元で「代かき馬」の雪形と呼ばれてるのは、白馬岳よりさらに北側(山麓から見て右側)にある白馬大池付近に出てくる「仔馬」の雪形のことを指すらしい。
さらに、代かき馬→代馬岳→白馬岳に変化したという説、この説は一番もっともらしいのですが、昔の文献をいろいろ調べてみても「代馬岳」という表記はどこにもなく、昔から「白馬」と書かれていたようです。
おそらくこの代馬岳→白馬岳説はあとから作り上げられたものと思われますが、今ではこれが世間一般に認められているものであるのも確か。
こうなると、どこかで「はくばだけ」が「しろうまだけ」と呼ばれるようになったと考えられます。白馬岳で名づけられた花はシロウマリンドウ、シロウマアサツキなど、ハクバではなくシロウマと名がつきます。もしかするとこれがきっかけで「しろうまだけ」の流れができたのかも・・・。ではなぜハクバリンドウではなくシロウマリンドウと名づけたのでしょうか?謎は深まります。
世間一般的には白馬岳は「しろうまだけ」と呼ぶのが正しいとされていますが、私自身いろいろ調べたり聞いたりしたことを総合して、私は「はくばだけ」と呼ぶようにしています。どちらが正しいとか間違いとかではないと思いますし、どちらでもいいんじゃない?という気もしますが・・・。
この機会に皆さんも白馬岳の読み方についていろいろ考えてみてください。